香りが扉を開いた日|言葉が届かなかった心に触れたもの

香りある暮らしをイメージした大きな花のイメージに”香りが扉を開いた日”とタイトルを載せたアイキャッチ 香りある暮らし

忙しい日ほど、気持ちと行動の速度がかみ合わない瞬間があります。

やらなくてはと思うのに、手が動かない。

子どもの声も届いているはずなのに、音だけが遠くを漂うように感じてしまうことがありました。

そんな自分を、私は長い間

「気持ちが弱いだけ」

「もっと頑張らなきゃ」

そう決めつけていました。

けれど、その考えが静かにほどけていく出来事があったのです。

言葉では届かない瞬間があると知った日

これは、私が香りに救われた日の記録です。

私の子どもにはある時期、意識がはっきりせず、声をかけても反応がなく、

虚ろな視線だけが宙を漂う日が続いていました。

目の前にいるのに呼びかけはどこにも届かず、

「私の声は、もう届かないのかもしれない」

そんな不安と無力感に押しつぶされそうな日々でした。

ところが、ある日。

子どもがとても信頼していた方がお見舞いに来てくださったのです。

その人が部屋に入った瞬間、ふわっと、いつもの香りが空気に混ざりました。

次の一瞬。

反応のなかった子どもが、糸に引かれるように上半身を起こしました。

まっすぐその人を見つめ、正座をしたのです。

声は出ませんでしたが、頬を伝う涙だけが、その気持ちを代弁していました。

これまでどんな言葉にも反応しなかったのに、

香りだけが、子どもの心を迎えに行った。

その光景は夢とも現実ともつかないほど鮮烈で、今も思い出すと胸が詰まります。

あの瞬間、私は理解しました。

心は、思考より先に動くことがある。

そして香りは、その扉をそっと開ける存在にもなり得るのだと。

暮らしの中で迷子になりそうなときに

忙しさに飲み込まれそうになると、呼吸も視野も狭くなっていきます。

そんな時、香りは戻る場所をそっと示してくれる存在でした。

「全部やらなくてもいい」

「今日はここで止まっていい」

声ではなく、感覚に触れながら。

香りは整えなくても迎えてくれる

香りは、完璧な暮らしの仕上げではありません。

むしろ、余裕のない日ほど役割を持ちます。

冷凍食品だけの食卓になってしまった夜も、

片付けが追いつかないキッチンも、

「だめだった日」ではなく、

「続けていい日」に変わっていきます。

うまくできなかった日は、香りがそっと灯るだけで、もう一度立ち上がれる場所になります。

香りは気持ちの帰るところ

香りは、ごほうびではなく帰り道です。

頑張りすぎた日も、自信をなくした日も、香りがそこにあれば再スタートの地点はいつでもつくれます。

あなたの日常にも、ふっと呼吸が戻る時間がありますように。

あの日、香りが扉を開いたあと
私の中に残った問いについて

▶ 香りは、正解を選ぶためのものではない
── 香りに気づくという選択

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